金沢では小学校や中学校の通学区域のことを「校下」といいます。
で,これが金沢弁(金沢だけとはいわないが,一部地域だけのもの)ということを知ったのは教員生活15年目くらい。
なにしろ当たり前のように「校下」という言葉を使ってた。自分が小学生の頃から,「校下」という言葉を使い,小学校の「校下」に住んでいると思っていた。
きっと地域の人たちも当たり前のように使っているでしょう。
「××校下社会体育大会」とか「××校下廃品回収」とかね。
金沢市からのお知らせにも「校下別ゴミ収集日」などと書いてある。
それほど当たり前の言葉なのでした。
でも,東京では「学区」,近畿圏では「校区」,名古屋は「連区」と言うそうです。
栃木県の一部では「結社」などというとってもすごい呼び方をしているそうです。
金沢は城下町ですから,それからきたのかもしれません。学校の周りの地域ということで「校下」という呼び名を採用したのかもしれません。
でも最近この「校下」という呼び名を「校区」に改めようという雰囲気があります。
誰がって?
それが教員自身なんだな。
学校の「下」というのは学校を上に見る発想だからいかん!というようです。
それを聞くと,ああ,また一つ金沢弁がなくなるなあ!という思いしきりです。
そんなもんいいじゃないの。上でも下でも。それが差別だのなんだのってならないよ。
差別なんてのは心の中の問題だ。「校下」と言ったからって地域住民を下にみてるわけじゃなし……
「民主主義と平等と人権を唱えれば,それがまともな教員だ。」なんて発想はおかしいぞ!と教員の私は思うのでした。
でも逆に言えば,これまで学校が地域の文化の発信地であり,中心だった時代が終わりを告げたってことかな。
そういえば,学校が終わって家に帰ることも「下校」と言うぞ。文部科学省だってこの言葉を使っています。
お城から退出することが「下城」なら,学校から帰ることが「下校」。
お城の周りに発展したのが「城下」なら,学校に通う地域が「校下」。そのどこがいけないの?
「下校」は共通語だと思うけど,これもダメなのか?
そろそろ「城下町・金沢」という言い方もなくなるかも。
なんて言うかって?
そりゃ「城区町・金沢」でしょ。
「城区町」が「ジョーク町」にならないでほしいね。
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★金沢弁とは関係のないおまけの話
「校下」の「下」以外に,学校現場で使っちゃいけなくなってるのが「〜下さい」という表記。つまり,保護者向け案内でも「〜下さい」というように「下」という漢字を使うのが禁じられ,みんなひらかなで「〜ください」とするようになっています。
一体どの保護者が文句を言ったのやら。
自己防衛に走る学校現場としては,文句言われる前に,「下さい」ではなく初めから「ください」とひらかな表記に移行しています。
一体どういう時代なのやら。
そのほかにも「子供」じゃなくて「子ども」と書けという,謎の圧力。
そもそも文部科学省の検定教科書だって「こども」は「子供」と書いてあるのに,教科書に書いてあっても,お知らせには「子ども」と書けというのはどうして?
そうそう,地域の「子供会」でさえ,「子ども会」と表記せよとの圧力。自分が子供会を担当していたときには抵抗したけど,地域のお偉いさんが「子ども会」と変更せよとの圧力。これまた謎の自己防衛。
「供」というのは「お供え(おそなえ)」なんだそう。「子供」は「子」を「供える」と書くからだめなんだってさ。
そんな漢字に罪はないでしょ。
一体誰が「子」を「供える」なんて思ってるの?
どうせなら全部ひらかなで「こども」と書いてくれた方がよっぽどすっきりする。中途半端になんで「子ども」なのか。
ついでながら「廃品回収」というのもなくなりつつありますね。みんな「資源回収」です。
昔は「廃品回収」が言い慣れていたんだけど,「廃品」ではなく,このあと役に立つから「資源」となるという,ある意味ポジティブ,積極的な評価の表現ですね。これならまだ積極的な意味づけということで分かりますが,「下」がダメ,「供」がダメって,別に大和言葉の表現を適当な漢字に当てはめたんじゃないかと思うのだけど,やはり当てはめた漢字に罪があるの?