「満腹探検隊」隊長は行く

 趣味の一つにウェブサイト作り,いわゆるインターネットのホームページ作りがある。始めたのは1995年頃のことである。当時はインターネットに接続する個人などごくまれで,大企業でさえほとんどウェブサイトは持っていない時代である。メールアドレスもほとんど誰も持っていない。メールを出したあと,「メール出したけど,読んでみて。」と電話をかけるという笑い話があたり前のような時代だ。もちろん携帯電話は誰も持っておらず,受話器がコードでつながれている電話である。インターネットへの接続も通常の電話回線を介し,あきれるほどの遅さである。今の光ファイバー回線で一分間でダウンロードできるデータは,当時ならば二か月近くかかるという計算になる。
芳賀唯  さて,そんな環境の中でも,ウェブサイト作りを始め,「とにかく情報発信をすることが大切。」と言われて,思いついたネタを次々と表現してみたのだった。「金沢桜百景」「読んでみまっし,金沢弁」などをはじめ,文章を書くことは好きだったから,次々とネタを思いついた。
 「満腹探検隊」もそのネタの一つである。元はと言えば,退職したあとに,週に一回くらいは金沢のラーメン屋,居酒屋などを巡り,出歩くことによって,視野を広げ,その報告でも書いて,脳の活性化にも役立てようと思っていた企画である。それを現職中に始めてしまった。携帯電話にかなり高性能のカメラがつくようになってからである。何をするかと言えば,外食や宴会などの際に食べた料理の写真を携帯電話附属のカメラで撮影し,それに対して何らかの文章をつけるというだけのものである。ただし,味のことはあまり書かない。そこへ行った経緯,店の雰囲気,周りの人々の観察記録など,まさしくどうでもいいことを書いている。いわゆるブログではないので,一つのページができあがるまでに,写真を加工し,文章を付け加え,配列を考え,関連したページを書き換えるといったいくつかの手順をふむ。HTMLやCSSといった表現の手法も勉強しておかねばならない。それを休日などの空いた時間に行う。まさしくそれを息抜き,お楽しみ,趣味としている。
芳賀唯  そして,最近のウェブサイトの更新はもっぱら「満腹探検隊」ばかりになってしまった。というのも,ほかのネタに手をつけるゆとりがあまりないということと,「満腹探検隊」ならば料理の写真を撮って,文章を考えるだけという手軽さがあるということ,それと外食したり,宴会があったりしてネタが尽きないということなどが理由である。
 最近では自分が料理の写真を撮っていても,家族も同僚も何も言わなくなった。むしろ協力的である。「この料理の写真撮らなくていいの?」と言ってくれたり,「はいどうぞ。」と,わざわざ料理を目の前に持ってきてくれたりするのである。始めた頃はラーメン屋でラーメンの写真一つ撮るのでも,「この人何してるの?」と見られているようで,気がひけたものだが,最近では写真撮影にも慣れてしまった。
 そんな「満腹探検隊」も,すでに金沢だけでも五百軒以上の店を探検しただろうか。ということで,探検はまだまだ続く。いい店があったらぜひ隊長にご紹介いただきたい。

(城南中学校 学校文集「十字星」 2014年3月)

天性人語のメニューへ 天性人語のメニューページ
トップページにもどる Prince Kochan's Productionのトップページ