今年の夏,能「殺生石」を観たばかりだったので,ここ那須に来て「殺生石」があると知ってぜひ訪れてみようと思っていたのだった。そして,日本は温泉の国だから,どこにでも硫化水素ガスが吹き出すところがあり,そんなところの岩場を「殺生石」と名付けるのだなあ,ここ那須の「殺生石」とはどんなものなのだろうなどと思っていたのだった。
しかし,それは大きな誤解で,この能の「殺生石」はそもそもこの那須の「殺生石」のことなのだった。
というのも,「殺生石」を見に行って,その案内のいわれを読むと,能の物語と同じである。そして,そう言えば能「殺生石」の中にも「那須野の原」という言葉が出てきたのを思い出したのだった。そもそもこの「殺生石」が能の物語のモデルなのかと思わず感心したのだった。
確かに現在でも立ち入り禁止で,時には臭い硫黄のにおいがただよう。岩の上を飛ぶ鳥も時には死ぬはずである。
ということで,この那須の「殺生石」を見ながら,能で演じられていた「玉藻前(たまものまえ)」や「修行者 玄翁(げんのう)」(ここの由来書きでは「源翁」(会津示現寺の開祖源翁和尚とあった))などとかを再び思い出していたのだった。