「読書タイム」の効用

 今年度から本校では一日の日課の中に「読書タイム」という時間を設けている。清掃と終礼の間に十分間の時間をとり,全校生徒が一斉に読書を行う。また,担任も副担任も全員が教室に行き,生徒と一緒に読書をする。率先垂範である。それは,学校中が静まりかえる時間である。生徒たちに本を読むという習慣をつけるとともに,思考力や読解力を養おうという意図である。
 全職員が教室に行って読書をしているので,職員室には私一人である。そこで私も電話番をしながら読書をしている。たかが十分間なのだが,これで,結構本が読み進められるのである。十分間もあると,電話や来客がなければ十ページ以上は楽に進む。「塵も積もれば山となる」というやつで,こうやって読み進めていくと,一月で軽く一冊は読めてしまうのである。
 中学生の頃から本は好きでよく読んでいたが,社会人になると忙しくなって,なかなか本が読めなかった。また,読んでも仕事関係の本が多く,仕事に関係のない趣味の本とか,小説とか,教養書などはとてもじゃないがゆっくり読む時間はなかった。ところが今,この「読書タイム」のちょっとした時間のおかげで,結構本が読めるのである。もちろん「読書タイム」で読んだ続きが読みたくて,家に帰ってから本を読んでしまう,などということもある。また,いつでも本を持ち歩き,外出先でのちょっとした十分間ほどの待ち時間にも,本を読んでいる。これはちょっとした「読書タイム」の効用なのではないだろうか。
 果たして生徒たちも,「読書タイム」で読んだ本の続きが読みたくて,自宅に持ち帰って続きを読んだり,十分間の休み時間も読書をしたりということがあるのだろうか。新しい本を探しに今まで以上に学校図書館に通うようになったり,休みの日に一気に残りを読み終えたりということがあるのだろうか。こんな「読書タイム」の効用が生徒たちにも広がることを願いたい。
 さて,今日もまた続きを読もう……。

(城南中学校 学校文集「十字星」 2012年3月)

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