藤井肇 白峰メルヘン展 望岳苑にて
藤井肇 白峰メルヘン展

 2004年11月8日から30日まで,白峰村(現・白山市)の白山セミナーハウス「望岳苑」にて「藤井肇 白峰メルヘン展」が開かれました。
 白峰の民話から拾った題材をお話とともに10の作品にしたものです。

入り口の藤井肇からのご挨拶  ここ「望岳苑」は金沢から車で1時間半近く,国道157号線を走り,県境にもかなり近づいたあたりでさらに山の中に入ったところにあります。
 冬は雪深い地で,12月から3月までは雪のためにおやすみするというところですが,天気がよければ窓から白山が眺められる,絶好の地でもあります。
 ここで行われた「白山メルヘン展」をご紹介しましょう。

(左・入り口に掲げられる藤井肇からのご挨拶)

 玄関を入ると,まずは藤井肇からのご挨拶。

フロントのところから「五郎淵」を見る
 玄関に入り,ふりかえると,まずは「五郎淵」がフロントの横にかかっている。

(左・フロントから正面玄関を見たところ)

望岳苑の廊下
望岳苑の廊下

 そして,廊下には作品が8点並べられている。

(上・廊下に並べられた作品)

 この廊下には「ドンドケ池」,「百万貫岩」,「千蛇ヶ池の蛇塚」,「白山の神様」,「十作ヌゲ」,「桑島の立岩」,「ホーズキ瀧」,「仙人ヶ窟」の8点が並んでいる。

望岳苑の食堂  そして,あと1点「仏平のハンサの木」は食堂にある。

(左・食堂に飾られた作品)

 それでは10の作品を10のお話とともに紹介しましょう。
 (このお話は作品の横に飾られていたものを掲載しています)
 なお,作品の画像をクリックすると大きな画像も見ることができます。

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五郎淵

五郎淵 「五郎淵」の大きな画像
 大道谷橋の上方にある深淵で,カワラメ(河童)がいて,人のシンノコ(肛門)を抜き取ると恐れられている。
 一人の男が昼食後,うとうとと昼寝をしていると,池の中から蜘蛛が上がってきて,熟睡している仲間の足の親指に糸をくるくると巻き付けた。うとうと男はこれを怪しみ,側の切り株に巻き直した。
 しばらくして,淵の中から糸を引いてきた。すると切り株は,池の中に転げ落ち,池の中から大きな笑い声が起こった。
 人間と思ったら,切り株であったからであろう。

ドンドケ池

ドンドケ池 「ドンドケ池」の大きな画像
 風嵐谷川の上流でチエジ谷川をさらにさかのぼった森の中の大池で,昔,雪解け時に熊狩りの男たちがやってきて,槍持ち男が池をおおった雪に乱暴に槍を突き刺した。
 その晩,槍持ちの男の夢に竜が現れ,「竜たちが一番嫌う黒鉄を突っ込んだので,千年の半分も積んだ修行が無駄になり,天国へ行けなくなった,おまえの命をもらう。」と言ったので,住職にお経をあげてもらい,その経枕を沈めた。
 その後,毎年七月十五日になると,経机が池の上に浮いてくるという。

百万貫岩

百万貫岩 「百万貫岩」大きな画像
 白峰本村から牛首川をさかのぼること十キロほどの川床にある。
 地上の高さが十五メートル,幅二十五メートルほどある巨岩で,昭和九年の大水害の時,流れてきた。
 重さ 百万貫 あるといわれている。

千蛇ヶ池の蛇塚

千蛇ヶ池の蛇塚 「千蛇ヶ池の蛇塚」の大きな画像
 泰澄大師が初めて白山に登られたとき,山上には三千匹の蛇が暴れ回っていて,人々が困っていたので,大師は三千匹を集め,因果を含め,もっとも凶悪な一千匹は切り捨てて塚に埋めた。これが弥陀ヶ原に残る蛇塚である。
 次の一千匹は,千蛇が池に封じ込め,雪で蓋をした。
 残る一千匹は福井の大野山中の刈込ヶ池に封じ込め,付近の大岩に大剣を立て,その影が池に映るようにし,蛇への脅しにして封じ込めた。

白山の神様

白山の神様 「白山の神様」の大きな画像
 泰澄大師が白山を初めて開かれたとき,白山頂上にお奉りすべき白山の神様の姿をお示し下さい,と願った。
 最初に現れたのは恐ろしい竜の姿だったので,住民が恐がるからと断り,次に現れた美しい女神は白山は女人禁制の山だからとしてまた断ったら,十一面観世音菩薩の荘厳,慈悲,円満なお姿が現れたので,白山の神様とした。

十作ヌゲ

十作ヌゲ 「十作ヌゲ」の大きな画像
 十作という男の夢枕に立った天女の,チエジ川が氾濫するからここから逃げよ!というお告げに従わないでいたら,突然川が増水し,十作の女房は慌てて草履を片一方だけしか履けずに逃げた。家は波に襲われ沈んでいった。その時,雄竜,雌竜の二匹が連れ立っていく姿が見えたという。

桑島の立岩

桑島の立岩 「桑島の立岩」の大きな画像
 桑島大橋のかかる牛首川の上流の左岸に,立岩といって,幅五メートル半,高さ十一メートルもあろうかという巨岩が川に沿って立つ。昔からここに弁財天が住んでいると言われていた。この岩の真ん中ほどに岩穴があり,いつも一匹の雨蛙がいた。弁財天が蛙に姿を変えて,弥勒の世(釈迦の死後四億六千万年後)を待っていると言われている。
 この立岩は,何度もの洪水で倒れてしまい,今川の中にある。

ホーズキ滝

ホーズキ瀧 「ホーズキ滝」の大きな画像
 大道谷川の上流にある滝で,昔住民がホーズキを作って福井の勝山へ売りに行こうとして,この滝の側を通過するとき,滝の中から「ホーズキをくれ,ホーズキをくれ」と何度も叫ぶ。
 無視して通過して,勝山に着き,荷を開くと,中は空でホーズキがない。それからこの滝の側を通過するときはいくつかホーズキを滝の中に投げ入れていくことにしたという。

仙人ヶ窟

仙人ヶ窟 「仙人ヶ窟」の大きな画像
 雁山峠の裏側にある,ガクモンノクラとよばれる岩壁にある岩穴で,高さ1.5メートル,幅1メートル,深さ0.6メートルばかりの三角形をなす。
 仙人が苦行した跡と伝えられ,天井に鬼という文字と思われるものが刻まれている。
 昔,西島の小倉清八というものが,この付近に焼き畑を作り,明日が火入れという晩,夢に「我はあの岩窟に住む仙人である。あと三日で願行が叶うので,それまで火入れを猶予せよ。ここ三,四日は雨も降らせず,風も吹かせないであろう。」と夢告したので,これに従った。
 その歳の暮れ,みすぼらしい行者が訪れ,私の願を聞き入れてくれたので,お前の家に火難除けの網をかけておく,と言って立ち去った。
 その後,西島全村が燃えた大火にも,小倉家は残り,現在に至っている。

仏平にハンサの木

仏平にハンサの木 「仏平にハンサの木」の大きな画像
 勝山に抜ける道の途中に,ホトケタイラと呼ばれる平地がある。その一端にハンサの大木がそそり立っていた。
 明治初年,白峰の林西寺に見真大師の絵像を京都からお迎えしたことがある。この仏平まで出迎えた村人が,このハンサの幹に山刀で切り込みを入れ,桜の小枝を差し込み,絵像をかけて礼拝した。
 このあと,桜の小枝は挿し木をしたかのように成長して花も咲くので,人々はこれを拝みにゆくほどであった。
 これは世の中を惑わすものだとして,切り取ってしまった。
 その後,この地を仏平と呼ぶようになった。

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新聞記事紹介

白峰に伝わる民話基に描く
白峰,藤井さん個展
北陸中日新聞(2004-11-11)
 元県議で造形作家の藤井肇さん(71)=金沢市泉野町=の個展「白峰メルヘン展」は,白峰村西山の白山セミナーハウス望岳苑で開かれている。30日まで。入場無料。
 4号前後の小さな油絵10点を並べた。いずれの作品も,泰澄大師が白山を開山した物語「白山の神様」や,人間にいたずらするカッパの物語「五郎淵」といった,白峰に古くから伝わる民話を基に描いた。
 抽象的な筆運びで,多くの絵の具をカンバスにのせ,色鮮やかに仕上げてある。また作品の横には,民話を要約した説明書が飾られているため,見る人の創造力を一層かき立てている。
 休館日は火曜。問い合わせは,望岳苑=電話0761(98)2288へ。(松山義明)

民話題材に油彩画
北國新聞(2004-11-11)
 洋画家の藤井肇さん(金沢市)の白峰メルヘン展(本社後援)はこのほど,白峰村白峰の白山セミナーハウス望岳苑で始まり,白峰の民話を題材にした温かみのある油彩画が宿泊客や来場者らを楽しませている。
 藤井さんは,高校時代に農業の調査で白峰に滞在して以来,たびたび白峰村を訪れており,今回は「千蛇ヶ池」「ホーズキ滝」など,白峰や白山の伝説を基に膨らませたイメージを,鮮やかな色彩,奔放な筆致で表現した小品を寄せている。30日まで。

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また次に期待しよう

藤井肇からのお礼のはがき

 個展が終わってから藤井さんから届いたはがきです。
 さあ,みんな,2005年に期待しましょう。

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そば処 みたき

みたきの案内 − おまけの話 1 −
 白峰に向かう途中,まずは腹ごしらえということではいったのがこの「みたき」という蕎麦屋。
 白山麓でもそばが栽培されているのですが,白峰にたどり着くまでにはいくつかのお蕎麦屋さんがあります。
 これはそのうちの1つです。

 「みたき」の地図を見る
みたき 全景 みたき のれん
 こののれんがなんだか見たことのある文字。
 もしかしてと思って近づくと,しっかりと「肇」と書いてあったのでした。

みたき 玄関を入ったところ 藤井さんの色紙  玄関を入るとこのように藤井さんの色紙が飾られています。
 聞くところによると,この「みたき」のご主人と藤井さんは知り合いだそうです。
 たまたま入ったところが,そんなところでした。
 お客さんは天気が悪い日にもかかわらずたくさんのお客さんでした。
 おそばも売り切れご免ということで,なくなり次第終了。
 ここでは私はそばを食べるならきまってこれという「おろしそば」を食べました。
 ちなみに右の写真は天ぷらそば。この天ぷらは写真では小さく見えますが,半径8センチくらい,高さもこれまた8センチから10センチくらいある円筒形の大きな天ぷらです。
 おいしいおそばをいただいてから,白峰へと向かったのでした。
おろしそば 天ぷらそば

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百万貫岩

百万貫の岩 − おまけの話 2 −
 望岳苑からの帰り道,白峰の町でお風呂に入りました。
 白峰には温泉がわいており,街の中には総湯(共同浴場)もあります。
 入りに行ったのは町はずれの白山まるごと体験村にある「天望の湯」というところです。
 ここの露天風呂は,晴れていたら白山が見えるという絶好の眺望です。
 そのあとさらにもう少し奥へ,つまり手取川沿いを白山登山口の別当出合へと6キロほど走ったところにあります。
 天気は悪く,小雨模様でしたが,道路から写真撮影。
 その岩の大きさがわかっていただけるでしょうか。
 ちなみに,一貫は3.75キログラムですから,百万貫は375万キログラム,3750トンということですね。

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