Prince Kochan's Production のむかしがたり

むかしがたり　２

ｅＡＴ　ＫＡＮＡＺＡＷＡ（イート金沢）

　ウェブサイトを開設した翌年の１９９７年に金沢市が「ｅＡＴ　ＫＡＮＡＺＡＷＡ（イート金沢）」という催し物をすることを知った。
　「ｅＡＴ」とは「electronic　art　talent」の略である。
　その基本概念（コンセプト）についてはどこかで調べていただくとよいと思うが，自分は単に面白半分，興味半分，目立ちたがり屋精神で「ホームページコンテスト」に応募してみたのだった。
　何しろその頃個人でウェブサイトを持っている人間なんてそう多くないし，持っていたとしても，一体何を情報発信すればよいのやらと，模索してみたり，とにかくやってみたいからつくってみたり，という感じのウェブサイトばかりだった。もちろん自分もそうなのだが，発信する情報については次々とネタは思いついた。
　その基本は何かというと「自分は金沢に生まれ，金沢に育ったのだから，金沢のことを語ればいいんじゃないのか。」ということだ。
　だけど有名な観光名所や施設，例えば日本三名園の「兼六園」や，郷土の偉人なんかは自分が調べて発信するよりも，専門家の方がすでにかなり詳しい。
　ならばどうするかということで，まずやったのは誰も紹介していない自分の好きな飲食店や居酒屋の紹介や，６年間麓で勤務した医王山（いおうぜん）の紹介，それと「金沢弁」についての自分なりのエピソードを語ること，それに金沢に関する自分なりの体験を載せること　などなどだった。
　当然のことながら，そんなことを当時ウェブサイトに掲載している人は誰もいない。
　今ならば食べ物屋の紹介サイトが林立し，山の紹介もあちこちにあるし，方言の紹介なんぞは日本全国ある。
　でも，当たり前だが，当時はなかったのだ。
　なので，先述の通り，面白半分，興味半分，目立ちたがり屋精神で第１回の「ｅＡＴ　ＫＡＮＡＺＡＷＡ」に応募した。
　まさしく芸術（art）の才能（talent）なんかまったくないのにである。
　ＨＴＭＬを書くのもただのテキストエディタである。
　そのときの応募したタイトルが長ったらしい。
「Prince Kochan's Production　がおおくりする『おすすめの金沢』と『読んでみまっし金沢弁』」
　まったくもってベタな応募タイトルで，１次審査を通過した皆さんはほんの数文字のかっこいいタイトルだが，自分だけがやけに長く，「なんじゃこれは！」といった感じのものであった。
　そもそも「Prince Kochan's Production　がおおくりする」なんてつけなくてもよかったのだが，この「Prince Kochan's Production」というのは商標登録してしまおうかというくらい１９８０年頃から使っていた，いや，愛用していた疑似プロダクション名で，とにかく世に発表して，「これは私のものです」と宣言したかったという，まさしく「目立ちたがり屋精神」のなせる技だった。
　さて，そうしたらこの「ホームページコンテスト」の１次審査を通ってしまったのである。
　そのご褒美が金沢の奥座敷「湯涌温泉」の老舗高級旅館「白雲楼ホテル」１泊２日ご招待だった。そこで「夜塾」と称してまさしく才能（talent）のある人たちの話を聞き，刺激を受ける催しであった。
　いまはなき「白雲楼ホテル」であるが，当時金沢で知らない人はまずいないという一目置かれる高級旅館で，おそらく石川県内では一番宿泊料の高い旅館だっただろう。
　だから「白雲楼ホテル１泊」だけでも十分満足のご褒美だった。何しろ２食付き，おまけに飲み放題である。
　そして，その翌日「金沢市民芸術村」で１次審査通過作品の公開審査が行われ，なんと自分の応募作品が「金沢賞」という賞をもらったのだった。こんな名前の賞は元々なかったが，そのときにいきなり誰だったか審査員の先生が「まあ，金沢市民の方が作ってるし，面白いから，これって『金沢賞』とでも名付けて，賞をあげたらどうでしょう。」みたいなことを言って，ほかの審査員の方々も「いいんじゃないですか。」ということで，えらく軽いノリのような感じで，その場で決まったのだった。
　世の中何が起こるかわからない。
　面白半分でも，興味半分でも，とにかく行動してみなくては何も始まらないということである。
　ちなみにこのときの副賞が「デジタル機器２０万円分」。何でも好きなものを２０万円分あげますというものであった。

ｅＡＴ　ＫＡＮＡＺＡＷＡ（イート金沢）’９７の資料
ｅＡＴ　ＫＡＮＡＺＡＷＡ（イート金沢）’９７に関する当時の新聞の切り抜き
今はなき「白雲楼ホテル」のリーフレット

むかしがたり　１　ウェブサイト開設の頃
このページは「むかしがたり　２」です。
むかしがたり　３　石川県インターネット作品募集と「金沢桜百景」
むかしがたり　４　金沢桜百景

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